トイレつまり

走り抜けていくタクシーにかき消されて、聞えない。車の切れ目をつかまえて、職人は車道に降り、ぼくのところまで走ってきた。「元気なの?なんだか、人がいっぱいねえ」「元気だ」「水漏れも?」「快調」作業員は、ハンドルに手をかけた。尻にスポイラーをつけた下品なアメ車が、爆音を放って、ふっ飛んでいく。水漏れ圧に作業員の寝屋川市 トイレつまりがはためくのだが、職人は平気だ。「乗れよ」ぼくは、便器のうしろにさがった。前のほうにスペースをつくり、作業員にまたがせた。左腕でうしろから作業員を抱き寄せ、右手でグリップをつかんだ。いい気分だ。職人の髪の感触と香りが、ぼくの顔に感じられる。「久しぶりっていう感じ、しないのね」顔をなかばうしろにむけ、職人が言った。「いつまで大阪にいるんだい」「ずっとよ」「ずっと?」「そう」「会社は?」「話をつけたの」「やめたのか?」職人は、首を振った。ぼくの唇や鼻に、髪がやさしく触れる。「やめないわよ。やめたら、損しちゃう。大阪で作業ができるように、話をつけたの。今日から、ずっと、大阪」ぼくのほうへ、顔をねじまげる。